google のロゴの画像です。

この画像をクリックするとホームへ戻ります。

この画像をクリックするとホームへ戻ります。

以下のテキストには”ネタバレ”を含んでいます。閲覧にはご注意ください。

キル・ビル Vol.1のポスターの画像です。 キル・ビル Vol.1のポスターの画像です。

ショウ・ブラザースのタイトルマークでクスグっといて、深作欣二への献辞で涙を誘う…… そこへ流れてくるのはナンシー・シナトラの『バンバン』。さらにそこへ、ハァハァゼェゼェって女性の喘ぎ声が重なります。あやうくエロティックな妄想に陥りかけるのですが、その喘ぎ声の主の顔が映し出されたとたん、そんな妄想は木っ端みじん。

顔面血だらけのユマ・サーマン!

視線も虚ろなユマ・サーマン!

しかも、モノクロどアップ!

ここで入るデヴィッド・キャラダインの饒舌なシャベリは、この映画がまぎれもなくタランティーノ(以下、タラちゃん)作品であることを顕示します。恐怖に怯えるユマ・サーマン。「やめて! ウチのお腹にはアンタの……」

ダーン! と銃口から飛び出す弾丸!!

『キル・ビル』はヲタク心をティッシュでやさしく撫でたあとに、耳掻きでカキカキ弄くるような、そんなヒキョーなオープニングで幕を開けます(笑)

▲ Page Top

ストーリーは一言で言うと、結婚式の日にボコボコにされた花嫁の復讐譚。この花嫁、”ブラク・マンバ”のコードネームを持つ殺し屋で、足を洗って家庭を築こうとしたその矢先、元の殺し屋仲間に襲われ、花婿をはじめ列席者全員死亡の大惨事とあいなるわけ。そのとき彼女は妊娠してたのですが、そのお腹の中の赤ん坊も……

この襲撃シーン、Vol.1では惨劇の前後しか描かれませんが、列席者のひとり(オルガン奏者)にサミュエル・L・ジャクソンがキャスティングされてるようなので、Vol.2ではたぶん詳細に描かれるんでしょうね。今からワクワクします(笑)

頭に銃弾を受けたものの奇跡的に命を取りとめた花嫁(検死に来た保安官が”ザ・ブライド”と命名)は4年間の昏睡状態ののち、蚊に刺された痛みで目覚め(?)、そして復讐の鬼と化すのです。目指す標的は、かつて自分も属していた殺し屋集団(毒蛇暗殺団)の4人のエージェントと、そのボスであるビル。

”ザ・ブライド”の壮絶な道行きの始まりです。

▲ Page Top

”ザ・ブライド”の旅は、タラちゃんお得意の時間をバラした展開で進みますわたしたちが最初に目にする敵は、ヴァニータ・グリーンって黒人女性。彼女を倒した後で”ザ・ブライド”が開くメモによって、じつはヴァニータの前に既にひとり倒していたことがわかります。

ヴァニータは今じゃ殺し屋家業から引退したらしく、夫もいれば娘もいて、郊外の小ぎれいな家に住んでます。”ザ・ブライド”が果たせなかった夢を実現させてるんですね。ヴァニータはナイフ使いの名手ってことですが、逆に”ザ・ブライド”の投げナイフによって倒されます。そこをヴァニータの娘(ニッキー、4歳)に見られてしまい、苦渋の表情の”ザ・ブライド”。

「ええか、悪いのはアンタのお母ちゃんなんやで。アンタが大きゅうなって、まだウチを許されへんのやったら、そんときはウチのとこ、おいで」

この思わせぶりなセリフ(あ、実際には大阪弁じゃありませんが ^^;)は、この場を盛り上げるためだけに用意されたモノなのでしょうか? それとも、Vol.2のための伏線なのでしょうか? その答えを知るには…… 来春まで待たなくてはなりません。コレって、つらいなァ。

ここで時間は遡り、先に書いた結婚式の惨劇後の検死シーンを起点に、しばらくは時間通りに(断続的にですが)進むことになります。

▲ Page Top

毒蛇暗殺団のひとり、エル・ドライバーが口笛を吹きながら登場。彼女は昏睡状態の”ザ・ブライド”の息の根を止めるため病院へ潜入します。エルのチャームポイントはアイパッチ。複数所持していて、TPOに合わせて使い分けてるお洒落さんです(笑) ここでは看護婦さんに変装するため、赤十字マーク入りのに付け替えたりします。また、このシーンでは、左に眠る”ザ・ブライド”、右に変装中のエルを配す分割スクリーンでサスペンスを盛り上げるという、デ=パルマっぽいところを見せたりも。

暗殺計画は寸前にビルから中止命令が出て実行されず、ここでのエルはほんのご挨拶代わりの顔見せってところでしょうか。エルにはVol.2で”ザ・ブライド”とのモノスゴイ対決シーンが用意されてるらしいので、その予告編ってところですかね。

▲ Page Top

お次が、これも先にチラっと触れた”ザ・ブライド”の覚醒シーン。彼女は、昏睡中に自分の身体を弄んでいた看護士と、彼が連れてきた”客”を血祭りにあげ、看護士のワゴン車をパクって病院を抜け出ます。ここでリハビリ・シーン(「親指を回せ」と念じながら精神を足に集中させる)をきっちり入れていたのには感心しました。わたしも半年ぐらい病院のベッドの上で過ごしたことがあるのですが、足が萎えちゃって、すぐには歩くことなどできないもんです。『マトリックス』で生まれてこの方ずっとポッドの中にたゆたっていたネオが、外に出てすぐ普通に歩けるようになるのに興ざめしたことがあったんですが、それへの当てつけなんかな? とか思ったりして。

”ザ・ブライド”が乗り逃げするワゴンはタラちゃんの愛車だそうで、後ろに大きな”Pussy Wagon”ってロゴが飾られています。別冊映画秘宝『キル・ビル&タランティーノ・ムービー インサイダー』によると、”Pussy Wagon”とは「本来、車の後部座席でセックスができるバンのことを指す」んだそうです。足を自由に動かせない”ザ・ブライド”が腕だけでやたらハァハァ言いながらワゴンの後部座席に乗り込むところは、何も知らなけりゃめっちゃ大げさなように感じるんですが、上記の意味を踏まえた上で観ると、もろカーセックスを意識させてるってことがわかるんですね。確かに、ユマ・サーマンの苦悩にゆがむ表情と喘ぎ声だけ聴いてると、こりゃもうタマランわけで。おっと、オッサンに戻ってしまったぞ(笑)

▲ Page Top

”ザ・ブライド”は必死に「親指を回せ」と念じながら、頭の片隅では復讐の段取りを練ってます。毒蛇暗殺団の中で居場所が突き止めやすいのは、東京にいるオーレン・イシイ。

ここで、幼い頃に両親が殺されるのを目の当たりにしたオーレンが、中学の時に親の敵であるヤクザの親分を殺し、修羅の道へと分け入り、超一流の殺し屋になるまでの半生が語られます。しかも、プロダクションIGによるアニメとして。

この、目の前で親を殺されってシチュエーション、ヴァニータの娘ニッキーと同じなんですよね。先に、ニッキーがVol.2でも絡んでくるかもしれない、みたいなことを書いたのは、このオーレンのエピソードがあったからです。

オーレンはついに東京のヤクザ世界を牛耳るほどの力を得ます。そのヤクザの親分連中が集まるシーンですが、麿赤兒、菅田俊、北村一輝、それにオーレンに首をハネられる國村隼と、まるで三池崇史の映画を観てるかのような豪華さ(笑) タラちゃんはキャスティングに『殺し屋1』とか参考にしたらしいんで、別に不思議ではないんですが。

オーレンは日本人と中国人の”あいの子”って設定で、日本語のセリフもけっこうあるんですが、オーレン役のルーシー・リューは吹き替えを断って自分でセリフを喋ってます。これはまァ、ハッキリ言って変な日本語なんですが、何を喋ってるかはわかります。それよりも菅田さんや國村さんのセリフの方が聞き取りにくいのはシャレになんないぞ(笑) わたしはこの映画を2回ぶっ続けで観まして、2度目はこのヤクザの集会シーン、けっこう気合い入れて臨んだんですが、やっぱりなんて言ってるのかわからないセリフがいくつかありました。ここにも字幕つけといてくれたらよかったのに(爆)

▲ Page Top

オーレンのことを語ってるうちに、”ザ・ブライド”の足はようやく動く状態まで回復しました。車が運転できるようになるまで13時間かかったことになってるんですが、その間に「看護士や”客”の死体は発見されへんかったんか」とか、「昏睡状態の患者がベッドから消えてることに誰も気づかんかったんか」とか、そんな些細なことには目をつぶり(笑)、”ザ・ブライド”と一緒に沖縄へ飛びましょう。

彼女が沖縄へ向かったのは、そこにハットリ・ハンゾウがいるからです(激爆)

”ザ・ブライド”はこの伝説の刀鍛冶ハンゾウに、「ネズミを退治するため」刀を一振り作ってくれと頼みます。「ワシはもう引退した身じゃけんのォ。今はしがない寿司屋のオヤジよォ」と一度は断るハンゾウですが、「そのネズミはアンタの弟子やねんけど」という”ザ・ブライド”の言葉に、刀を作ることを承諾します。

ハンゾウ役のソニー千葉は、タラちゃんの強烈なリスペクトによるキャスティングですが、正直ググっと来るような役じゃありません。セリフも今ひとつインパクトないし。ただ、曇った窓ガラスに指で”Bill”と書くところは、めちゃくちゃカッコいい。”i”のチョンの部分をグイっと引くところは鳥肌モンでした。

▲ Page Top

ハンゾウが”ザ・ブライド”に日本刀の極意を伝授するシーンがあったらしいんですが、残念ながらセットまで作りながらもカットされたようです。しかし、ハンゾウの教えは敵を倒すたび、”ザ・ブライド”の心に響きます。

曰く、「戦えば必ず勝つ。これ兵法の第一義なり。人としての情けを断ちて、神に会うては神を斬り、仏に会うては仏を斬り、然る後に、初めて極意を得ん。かくの如くに、行く手を阻む者、たとえ悪鬼羅刹の化身なりとも、あに、遅れをとるべけんや」

じつはコレ、1978年に千葉ちゃんが主演したテレビ版『柳生一族の陰謀』(第1話の監督は深作欣二)オープニングからの引用。さらにその元ネタは、深作さんが監督した映画版『柳生一族の陰謀』(1977年)で萬屋錦之介が宣う、「親に会うては親を殺し、仏に会うては仏を殺す」。また、このセリフは同じ深作さんの『魔界転生』(1981年)でも、「神に会うては神を斬り、魔物に会うては魔物を斬る」とアレンジして使われてました。

映画版『柳生一族の陰謀』、『魔界転生』とテレビ版『柳生一族の陰謀』の第1話は、いずれも野上竜雄が脚本を書いてるので(映画2作は共作ですが)、おそらくこのセリフは野上さんが編みだしたモノなのだと思ってたんですが、千葉ちゃんは『キル・ビル&タランティーノ・ムービー インサイダー』のインタビューで「ありゃァ、深作のオヤジが書いたんちごうたかいのォ」と答えてらっしゃいます。

それにしても、テレビ版の『柳生一族の陰謀』までチェックしてるとは、恐るべしタラちゃん。わたしでさえ本放送では観てなかったちゅーのに(笑)

▲ Page Top

1ヶ月後、ハンゾウ渾身の一振りをたずさえ、”ザ・ブライド”はオーレンのいる東京へ飛びます。そして、ここから、この映画のクライマックス、対決アクションの怒濤の連発となるんですが…… なんか書いてるうちにどんどん長くなってきちゃったんで、映画に合わせてこのテキストも前後編に分けることにします(笑)

そんなわけで……後編に続く

▲ Page Top

■ ホームへ戻る


Copyright(C) Miyako Sudou

Life is Carnival