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以下のテキストには”ネタバレ”を含んでいます。閲覧にはご注意ください。

ゼブラーマンの立て看板の画像です。

白と黒のエクスタシー

哀川翔の主演100本記念作品が特撮ヒーローものになるらしいってことは聞いてましたが、まさかソレが『ゼブラーマン』とは! それを知ったときにゃ腰が抜けるかと思いましたよ、マジで(笑)

オリジナルの『ゼブラーマン』は1978年に放送されましたが、思ったより……ってゆーか、ぜんぜん人気が出ず、わずか7週で打ち切られ、再放送も一度もなかったようなので、そんな番組が存在していたことさえ知らない人がほとんどだと思います。実際、わたしの周囲でこの番組を知ってる人はまったくいません

この番組が打ち切られた最大の原因は、放送が始まって3話か4話あたりまでタイトルロールのゼブラーマンが出てこなかったからに他ならないでしょう。この種の番組のメイン・ターゲットは言うまでもなくお子様ですが、そのお子様たちはヒーローが敵の怪人や怪獣をやっつけるところを見たいわけですよ。それなのに画面には、環境問題がどーしたこーしたってドロドロした地味〜な人間ドラマが延々と映しだされます。ある意味、裏でやってた『部長刑事』の方がまだハデだったかも(笑)

わたしは当時、ATG映画なんかにハマってたりしたイヤな高校生だったので、こーゆー展開にスゴク興奮したモンですが、子供にゃ付いていけませんわな。7話で終わっちゃったのも無理なかったと思います。あ、「高校生にもなって、こんな番組観てたんかい!」などとツッこまないようにね(苦笑)

そういや、哀川さんはわたしと同級で、三池監督は1学年上なのですが、彼らはこの番組、観てたんでしょうか? クドカンは小学校の低学年だったから観てた確率高いですね。ってことは、『ゼブラーマン』を持ち出したのはクドカンか?

さて、先に書いたよーに『ゼブラーマン』は再放送もされず、わたしの知る限り、『宇宙船』などの特ヲタ御用達雑誌で特集が組まれたことなどもなかったように思います(『アニメック』の”短命に終わった特撮番組”特集で、チラっと触れられていたのが、たぶん唯一の記事だったような)。そんな知る人ぞ知るって特撮ヒーローを引っぱり出してきて、しかも単なるリメイクではなく、ダメ中年が憧れていたヒーローとして再生するっていう、一種のメタドラマにしちゃったところが、この映画『ゼブラーマン』のスゴイところなのです。

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なっちゃいねぇな

時は、1万頭のアゴヒゲアザラシが川を上るなんてニュースが流れる西暦2010年。ニュース・キャスターのお姉さん(麻生久美子似……ってゆーか、本人ですが)は、「川の上流には、近ごろ巨大ザリガニが発生したり、野鳥の変死などが相次ぐ横浜市八千代地区があります」なんてことを伝えたりしてます。

その八千代地区在住の小学校教諭・市川新市さん(スゴイ名前!)は、『放射能戦隊アレクサンダー』って特撮ドラマを見て、たいそう怒ってらっしゃいました。なにしろ、このアレクサンダーさん、ピンチに陥ると「こうなったら放射能だ」と、核兵器で敵(貞子似)をやっつけちゃうんですから、新市さんが「なっちゃいねぇな」と憤慨するのはよくわかります。”被爆宇宙人”って呼ばれただけで日の目を見れないドラマもあったりするのにね(笑)

新市さんは、生徒たちから「暗い」からってバカにされまくってる小学校のダメ教師。家庭じゃ奥さん(渡辺真起子)に不倫されてるダメ亭主。そのうえ、勤務先の八千代小学校に通ってる息子(三島圭将)がイジメられてるのを助けることもできないダメ親父。娘(市川由衣)は娘で中学生のくせして中年男相手にサポなんかしてたりするし。

そんな新市さんには、人に言えない密かな趣味がありました。彼は夜な夜な女性服を身にまとい、顔にはメイクを施して…… あ、すいません、コレはわたしのことでした(笑)

新市さんは自作のコスチュームを身にまとい、顔にはコレも自作のマスクを被って、毎夜”ゼブラーマン”ごっこに興じていたのです。

ゼブラーマン・スーツに身を包んだまま「ジュース買いに行っちゃおうかな……この格好で」と呟いて、すぐに「アカン、アカン」と首を振る新市さん。

ここでわたしは叫びました(心の中で、ですが)。「これは俺だ!」(by 菊千代)

わたしも女装を始めてしばらく経った頃、家の中で着飾ってるだけではガマンできず、「このまま外に出たいなァ」→「いやいや、アカンアカン」ってことを繰り返してたことを思いだしたのです。わたしはこれまで何十本となく哀川さんの映画を観てきましたが、このシーンほど彼を愛おしく感じたことはありません(笑)

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”旅”の仲間

八千代小学校に車椅子の転校生(安河内ナオキ)がやってきました。新市さんは、彼が机に書いた落書きを見て、彼もまた『ゼブラーマン』のファンであることを知ります。人生において何が素晴らしいと言って、同じ趣味嗜好を持つ同志と巡り逢えることほど素晴らしいことはないでしょう。そして、その趣味嗜好の対象がマイナーであればあるほど、同志と出逢ったときの喜びは大きくなるモノです。それまで何の希望もなかった新市さんの前途に明るい光が射し込み、教え子である彼を”浅野さん”と慕うようになります。

新市さんは浅野さんから、『ゼブラーマン』のファン・サイトがあることを教えてもらいます。このサイトは実際にファンの方が作っておられるモノで、映画の中でも紹介されていた『ゼブラーマン』の動画を見ることができたりします。興味ある方は覗いてみてください

ところで、そのサイトで知ったんですが、ゼブラーマンの正体である十文字譲役を演じられていた新川優馬さんは現在、消息不明なんだそうです。そういえば、『ゼブラーマン』終了後は2時間ドラマのチョイ役(元ヒーローお定まりの悪役専門でしたが)で何度か見た後は、もうズイブンとお目にかかってませんね。若くして他界されたという噂もあるそうで、ヒジョーに気になるところですが、映画の中でも気になる事件が起こっていました。

新市さんの住んでる町にカニの仮面を被った通り魔が出没し、市民を恐怖のドン底に陥らせていたのです。

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売れっ子脚本家は女装マニアの夢を見るか

八千代小学校では通り魔対策として、児童たちに夜間外出しないよう呼びかけると共に、教師たちが二人一組で校区をパトロールすることになりました。新市さんの相方は一本木先生(内村光良)。名前どおり一本気な先生で、「この間も女装マニアを捕まえたんですよ」なんて恐ろしいことをニコやかに笑いながら言ったりするよーな人です。その女装マニアの人は、何も悪いことなどしてないのに、ただセーラー服を着て歩いてたってだけで一本木先生にトッチメラレタのだとか。ヤクザよりも”変態”が大嫌いなんだそーです。

先に書いたジュースの件といい、ここで「コスプレ=変態=女装者」という図式を放り込んでくるところといい、もしかしてクドカン、こっちサイドの住人か?(笑) その女装マニアは高校の教師だったって設定も、なんだかなァ(爆) なんにせよ、夜道では絶対に一本木先生と出くわしたくないことだけは確かです(激爆)

パトロールから戻って、今日も今日とて一人でゼブラーマンごっこに興じていた新市さん。作り直したゼブラスーツの出来が予想以上に良かったのか、その雄姿を浅野さんに見せたくなってきました。ジュースを買いに行ったりしたおかげでちょっぴり度胸もついたんでしょうね。ところが住所録を見間違えて、街の中をウロウロするハメに。それまでは、ゼブラスーツを浅野さんに見せたいがために脇目もふらず突っ走れたのですが、一度つまづくと熱さも冷めちゃうってもんで、新市さんの頭の中には、さっきの一本木先生の言葉がコダマします。

「バレたらクビだ」

夜道をコソコソ→人の気配がしたら慌てて隠れる……と、そんなことを繰り返してる、そのときでした。闇を引き裂く女性の悲鳴が八千代地区に響き渡ったのです!

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新市さん、覚醒す

その頃、浅野さんは、お母さんのお買い物に付き合わされていました。商店のオバサンと話をしてるお母さんを退屈そうに待ってる浅野さんの目に、白と黒の”なにか”が走っていくのが映りました。「ゼブラーマン!」

新市さん、気がつくと、悲鳴がした現場に立っていました。そこで彼が見たモノは、倒れた女性の服をハサミでチョキチョキしてる、巨大なカニのマスクを被った男の姿でした。

じつは新市さんの娘のサポ相手だったりもするこのカニ男、演じるは柄本明。メイキングDVDには、その柄本さんのメイクシーンが収録されていますが、カニのマスクを被せられて「コレ、仕事だよね」と情けなさそうに言う柄本さん……なんか、ヘンにかわいい(微笑)

カニの被り物を被り、両手に持ったハサミをチョキチョキさせながら新市さんに目を向けるカニ男。見た目は確かに情けないんですが、コレがけっこう……ってゆーより、めっちゃ強い。なぜかってェと、カニ男には宇宙生命が寄生してるのです。そんな怪人相手に戦いを挑むハメになった新市さん。フツーなら一撃で倒されるところで、じっさい最初のうちは一方的にボコられていたんですが……

なんか、どこかでスイッチが入ったみたいに、急に身体の動きが変化します。勝手に身体が動いて、カニ男が繰り出すキックをかわし、ブーメランのように飛んでくるハサミもヒョイヒョイと避けちゃう新市さん。一方、新市さんのパンチやキックは確実にヒットします。そして、最後に”ゼブラスクリューパンチ”が炸裂して……

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走れ、チロリアン2号

浅野さんが現場に着いたとき、戦いは終わったあとで、彼が見たのは走り去るゼブラーマンの後ろ姿だけ。そこへ二人の男が駆けてきました。「八千代地区に宇宙生命の拠点がある」って情報を入手し、捜査に当たっていた防衛庁特殊機密調査部の及川さんと瀬川クンです。二人はエンブレムに付けてるマークは流星」なチロリアン2号でパトロール中に宇宙生命の放つ波動をキャッチし、ここへたどり着いたのでした。二人が見たのは、ボコっと陥没したカニ男の顔から溢れでる緑色のなんかブヨブヨしたモノ。これこそ、宇宙生命の正体なのでした。

及川役は、渡部篤郎。「哀川? 三池? 誰ソレ? でも渡部さん出てるし」って理由で、この『ゼブラーマン』を観に来られた若い女性も少なからずいることでしょう。そんな彼女たちがかなりのショックを受けたであろうことは想像に難くありません。なにしろ、渡部さんの最初のセリフは「チンコかゆい」なのです(笑) それも、そのセリフは映画が始まって1分ぐらいのところでイキナリ飛び出るのです。彼女たちには「ご愁傷様」としか言いようがありません(爆) ちなみに渡部さんは、哀川さんとお隣さんって縁から、この『ゼブラーマン』に出演されたんだそうな。

及川の相方・瀬川役は近藤公園さん。大人計画の人なので、こっちはクドカンつながりでの出演でしょう。この人、『昭和歌謡大全集』じゃロケットランチャーで吹き飛ばされてバラバラにされてましたが、この映画では宇宙生命に寄生されてシオシオのパーになっちゃうって、かわいそーな最期を迎えます。わたしが思うに、近藤クン、今後もこんな役ばかりオファーが来るんでしょーね。だって、なんかイジリたくなる顔なんだもん、近藤クンって(笑)

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教頭先生、あなたはだあれ?

自分の身体に何が起きたのか、何が起きようとしてるのか、よくわからないまま新市さんは、カニ男と同じように宇宙生命に寄生された怪人たちを次々と倒していくことになります。”ゼブラーマン・バックキック””ゼブラボンバー”などの必殺技を駆使して悪者たちをやっつける新市さん=ゼブラーマンに、町の人々もよくわからないまま、「白黒マン」とか「葬式マン」とか熱い声援を送るようになります。

しかし、彼が戦いの場に走るのを止めようとする人もいました。それは八千代小学校の教頭先生(大杉漣!)です。教頭先生は、転校してきたばかりの浅野さんを別の小学校に転校させようと画策し、新市さんには別の小学校に教師の欠員が出たから明日からそっちへ移るよう勧告します。その一方で体育館を封鎖し、ドアや窓を赤いテープで目張りまでしちゃいます。どうやら、この体育館こそ宇宙生命たちの巣窟らしいのですが、一介の小学校教頭がなぜそんなことを知ってるのでしょうか? 彼はいったい何者なのでしょう?

余談ですが、目張り用のテープの色が赤いのは、たぶん黒沢清監督の『回路』へのオマージュとゆーかパロディとゆーか、なんかそんなモンなのだと思われます。『回路』でも”開かずの部屋”を赤いテープで目張りするシーンがあるんですが、そのテープを貼ってた人は誰あろう哀川翔さんだったのです。

折もおり、やっかいな事件が発生しました。それまで、見るからに悪そうなオッサンばかりに寄生していた宇宙生命が、今度は子供たちに寄生しちゃったのです。新市さんは教頭先生が止めるのを振り切って現場へ走ります。残された教頭先生は、目張りしたテープの破け目から、宇宙生命が”漏れて”ることに気づき、意を決して体育館の中に入ります。

そして……

ここから先は……後編で白黒つけるぜ!

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