以下のテキストには”ネタバレ”を含んでいます。閲覧にはご注意ください。
- 2008年5月31日
- シネ・リーブル梅田(西梅田)
誰も死なない「テロ」をめぐる 美しい 現代の寓話
上のは予告編に出てくるこの映画の紹介文ですが、「寓話」というより「神話」でした。天願版『神々の深き欲望』ってのは言いすぎ?
実際、この映画の舞台になる村や登場人物の設定は『神々の深き欲望』のそれと似かよってる部分が多いように思えます。どちらも、古くからの言い伝えみたいなモノが残ってるような過疎の村に都会人がやってくるってところから話が動きだすし、どちらの村の住人も変な人だらけだったりします。『世界で一番美しい夜』の二人のヒロインのキャラクターは、『神々の深き欲望』でひときわキョーレツな存在感を見せたトリ子のキャラを二つに分けたようではありませんか。
天願大介監督のこれまでの作品って、いかに今村昌平っぽくないモノを作るかに苦心していたように思えるんですけど、似てようが似てまいが、どちらにせよ今村作品と比べられちゃうんですよね。偉大すぎるお父さんを持ってしまった悲しみってゆーか。それならいっそ、今村イズムを継承したようなモノを作っちゃえ……って考えたかどうかはわかんないけど、とにかくそんな映画を作っちゃったわけで、あまつさえお父さんの作品と比べても遜色ない出来に仕上げちゃったんですから、たいしたもんです。
物語は中学生の少女の語りで綴られます。自分が生まれ育った村が、なぜ「出生率日本一」の村になったのか? その秘密が「神話」として語られます。
14年前、この村に「島流し」された新聞記者(田口トモロヲ)が、
- みんなからバカだと思われているけど実は天才娘(美知枝)
- その父親で伝説の漁師と思われてるけど実はフォークシンガー(三上寛!)
- 元・精神科医でシャーマンの素質も持った性欲過剰すぎるスナックのママ(月船さらら……あまりの脱ぎっぷりの良さにピンクかAVの人やと思ってたら、元・ヅカ女優やったんやね)
- 縄文パワーで美しいテロを成し遂げようとする過激派くずれ(石橋凌)
といった人たちと出会うことが、この「神話」を形づくることになります。
他にも変なキャラが目白押しで、このあたりは三池さんの映画みたいやなァ、とかって思ってたら、よく考えたら天願さんって三池監督で石橋凌主演の『オーディション』の脚本も書いてたんやん。で、三池さんはイマヘイ映画学校の出身やし、ああ、三池作品のルーツ(のひとつ)は今村昌平なんやな、と。いわば、三池崇史と天願大介は親戚筋みたいなもんやねんな、と。そう考えると、わたしがこの映画にビシビシ感じまくってしまったのもナットクできるわけですわ。
映画の前半に「蛇」のイメージを植えつけておくべきだったのではないか、とか、主人公を罠にはめた男たちの末路はどないなったねん、とか、ちょっと惜しいなァと思えるところもあります。が、それを差し引いてもジューブンにお釣りの来る、そんな素晴らしい映画でした。三上寛の唄がたっぷり3曲も聴けるのも、みやこさん的にポイント高しだわよ。