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以下のテキストには”ネタバレ”を含んでいます。閲覧にはご注意ください。

モスラの画像です。

ここから後編です。

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守護神じゃゆうても、虫は虫ですけェのォ

豪華客船オリオン丸が沈没するという事故が起きました。日本を目指すモスラとモロにぶつかっちゃったのです。このオリオン丸の事故に関して、ネルソンたちは自分たちの知ったこっちゃないと突っぱねます。

中条と善ちゃんはもう一度、小美人と話をしようと中央劇場の楽屋に押し掛けますが、ネルソンの手下が中に入れてくれません。しかたないんで善ちゃんは「暴力はよーしましょう」とか言いながら、自分が楯になって中条を部屋の中に送り込みます。この映画唯一の(人間同士の)アクション・シーンとなるわけですが、コレがなかなか小気味よい。家族連れのお客さんを意識したんでしょう、殴られたり階段から転がり落ちたりしても、ちっとも痛そうじゃないところが本多監督らしいですね。ネルソンの手下たちを片付けた善ちゃんが鼻息荒く、「スッポンの善ちゃんは食いついたら離れませんからね」と言うところは、ちょっと快感です。

中条は小美人に、なんとかモスラを止めるよう頼みますが、小美人は哀しげに首を振るばかり。モスラはインファント島の守護神と崇められているモノの、所詮は巨大な昆虫にしかすぎません。善悪の区別なんかあろうハズもなく、小美人のテレパシーに感応して、ただひたすら日本を目指してるだけなのです。北大路欣也チックに言うと、「守護神じゃゆうても、虫は虫ですけェのォ」ってなモンです(笑) いや、笑いごとじゃないんですってば。こーしてる間にも、モスラはどんどん日本に近づいてきてるんですから。

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モスラ、海を渡る

航空自衛隊の偵察機が洋上を進むモスラを発見するシーンは、ちょっとした感動を与えてくれます。じつはこのシーン、たぶん最初のフィルムからそうだったと思うんですが、パイロットの口の動きとセリフとが大きくズレていたのです。それが今回のDVDでは見事に修正されてるんですよ。この修正についてはDVDの裏ジャケットにも書かれているのですが、わたしはソレを読まずにDVDを観たため、めっちゃビックリしました。わざわざビデオを引っ張り出してきて、このシーンを確認したぐらいです。ビデオではやっぱりセリフはズレまくってました(笑)

40年ぶりにズレが直って大喜びのパイロットからの報告で、やはりモスラはまっすぐ東京に向かって進んでることが判明。さっそく空自によるモスラ殲滅作戦が敢行されました。まず、爆撃機の大編隊がエアゾール缶を投下するんですが、中身は殺虫剤なんでしょうか? 更にそのあと、戦闘機隊によるロケット弾の集中砲火で太平洋は文字通り火の海と化します。

モスラは海中に姿を消しますが、その死体は見つかりませんでした。でも、もうモスラは死んだと思っちゃってるネルソンはお酒など飲んでご機嫌です。そんなネルソンの許へ、中条と善ちゃん、それに原田博士は、博士が考案したあらゆる電波を遮断する物質で作ったケースを持ち込み、どうしても小美人を帰さないのなら、せめてコレをカゴにかぶせるよう要請します。そこへ花村女史が飛んできて、第3ダムに異変が起きてることを伝えました。

「モスラか!?」

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善ちゃん危機一髪

巨大なモスラがどうやって海中からダムへ移動したのかは謎ですが、そんなことをいちいち気にしてるヒマはありません。決壊したダムから流れ出した水がどんどん迫ってきて、今にも流されそうな橋の上に赤ん坊が取り残されてるのですから。子供の名前を叫び、泣き喚くお母さん。止むに止まれず橋の上を走る善ちゃん。川はドンドン水かさを増し、壊されつつある橋ゲタ。赤ん坊を抱えて一目散に戻ってくる善ちゃんを追いかけるように、橋が流されていきます。間一髪で戻り着いた善ちゃん。

とまァ、ここまでが見せ場なんですが、じつはこの後こそ本多演出の真骨頂だったりします。お母さんに赤ん坊を手渡してホっと一息ついたとたん、すぐ目の前の橋桁まで流されちゃって、思わずのけぞる一同。―コレですよ、コレ。時間にすればほんの数秒のカットですが、コレがあるのと無いのとでは印象はかなり変わってきます。この細かい味付けがあるからこそ、それまでの一連のシークエンスが活きてくるんですね。あとで出てくる補難民のモブ・シーンと並んで、本多監督の職人芸を目の当たりにできる名シーンだと思います。

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田山雅充クンはどこに?

それまでネルソンを擁護していたロリシカですが、ようやくネルソンに小美人を帰すよう通達しました。これ以上ほうっておいたら、とばっちりが飛んでくることに気づいたようです。ま、もう遅いんですけどね。その引き取り現場を取材に来た善ちゃんは中央劇場の前で中条とバッタリ。「信二がどうもネルソンの所に来てるらしいんだよ」

好奇心旺盛な正義漢ってところは兄譲りなんでしょうか、中条の弟の信二は、国際問題やら何やらでマトモに動けない大人たちに業を煮やし、単身ネルソンのところに乗り込んだようなのです。で、どーなったのかというと…… アッサリ捕まっちゃってました、信二クン(苦笑) 「正義漢じゃゆうても、子供は子供ですけェのォ」ってなモンです(もういいって)

ロリシカのMPたちを先頭に中央劇場へ踏み込む一同。しかし、ネルソンたちは既に逃げたあとでした。信二は縛られて椅子の下に放り込まれていましたが、なんとか無事な様子。この信二役の田山雅充クンなんですが、『春うらら』の田山雅充さんとは……別人ですよね? ネットでアレコレ調べたところ、”田山雅充”って名前の役者は『モスラ』でしか見あたらない。年齢的には歌手の田山さんと同じぐらいだと思うんですが。う〜ん、どうなんやろ?

(その後、『春うらら』の田山雅充さん御本人から掲示板に「あれは私です」との書き込みがありました。いやァ、ビックリ!)

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モスラ、進撃す

モスラは横田基地から東京へ向けて進撃を始めます。体長180メートルにも達したモスラに、自衛隊の火力はまったく歯が立ちません。さすがのネルソンも恐れをなして、手下(中村哲&オスマン・ユセフ)と一緒に日本を脱出。もちろん小美人を連れて。

ただひたすらモキュモキュ進むだけのモスラを、円谷特撮は、ある時は俯瞰で、ある時は正面からアップで、というように自由自在に映しだします。モスラ自体も、大きさが異なる数種類の気ぐるみやギニョールを場面場面で使い分け、憎らしいほど見事な”絵”を作りだしています。怪獣映画数々あれど、わたしはこの映画のモスラを俯瞰で捉えたシーンがいちばん好きだったりします。また、このモスラ襲撃シーンは、怪獣映画の醍醐味のひとつである逃げまどう民衆の大規模なモブ・シーンを堪能できるところでもあります。

都心に入ったモスラは東京タワーに取り付きます。「糸を吐いてる」と花村女史。モスラは繭を作りはじめたのでした。この少し前に、「身体に最終変化の兆候が見られる」なんて自衛隊の通信が入ってるところなんか芸が細かい

自衛隊は攻撃をいったん休止し、完全に繭化したところを燃やす作戦に切り替えます。翌朝、ロリシカが誇るパラボラ兵器・原子熱線砲が運び込まれ、作戦開始。メーサー殺獣光線車の原型ともいえる原子熱線砲の威力はすさまじく、繭は燃えあがりました。

ロリシカのアジトで「モスラ、遂に死す」のラジオ放送(なぜか日本語)を聴いたネルソンたちは祝杯を挙げ、未だに歌い続ける小美人を「もっと歌え、もっと歌え」とはやしたてるのでした。

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羽化シーン、あります

ところがどっこい、モスラは死んでませんでした。黒く焦げた繭を突き破り、成虫へと変化を遂げたモスラが現れたのです。ヨッコイショって感じで極彩色の羽を広げ、小美人のいるロリシカ目指してモスラは飛び立ちました。

それを見送る善ちゃんと花村女史ですが、次のシーンではわけがわかんない顔でロリシカ行きの特別機に乗ってたりします。そこへ中条がやってきて、「話が急でビックリしたでしょう」 善ちゃんと花村女史、そして中条の3人は、小美人の友人ということで、なんとか話を付けるようロリシカ政府に要請されたのでした。

映画のフィルムというのは繰り返し上映されているうちに傷ついたり、時にはその一部が無くなってしまうってことまであったりします。『モスラ』もその例に漏れず、特撮大会華やかし1980年前後に上映されていたフィルムは、あろうことかこのモスラの羽化シーンがバッサリ紛失してしまったモノでした。そのため、『モスラ』は何度も観たけど羽化シーンだけは観たことないって人が当時はけっこういたものです。

これは高校ンときの先生から聞いた話ですが(その先生も特撮ファンだったんです)、ある上映会で『モスラ』を観たとき、原子熱線砲のシーンからいきなり特別機のシーンまで飛んで、中条の「話が急でビックリしたでしょう」ってセリフになったモンだから場内大爆笑になったそうな。

今回のDVDには映像特典として東宝チャンピオン祭り版が収録されてますが、この羽化シーンが無いヴァージョンを入れておいた方が、オールド・ファンとしては嬉しかったかも(笑)

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モスラ、飛ぶ

迎撃に出たロリシカ空軍を全滅させたモスラはニューカーク市の上空を旋回していました。はるばる海を渡ってきたモスラですが、小美人は例のあらゆる電波を遮断する物質で作られたケースの中に入れられてるんで、ハッキリした居場所がわからず、とりあえずそのへんを飛んでるしかないのです。光線を発するわけでもなく、ただただ飛び回ってるだけなのですが、その羽ばたきはモノスゴイ風を巻き起こし、車は舞い散るわ、ビルは崩れるわの大惨事に。

元々のシナリオでは、ネルソンは九州へ逃げるハズだったのを、ワールド・セールスを請け負ったコロムビア映画から、モスラを海外で暴れさせてほしいとの要請があり、最後の舞台はアメリカを模したロリシカになったそうです。ってゆーか、原作では最後の舞台はロリシカになっているので、シナリオの段階で九州に変更したのを原作通りに戻したってことなんですね。

九州のシーンは一部撮影されてた部分もあるらしいんですが、結局はボツになって幻のフィルムと化しました。今だったら、そのフィルムも残しておいてDVDの特典に付けたりするんでしょうけど、残念ながら破棄されたようです。

そんなこんなで、このシーンは充分な準備ができなくて、円谷監督はかなりご不満だったようです。確かにこのシーンは、同じようなカットの繰り返しで冗長な気がしますし、ミニチュアも東京に比べると大ざっぱに作られてるように思えます。日本での同様のシーンなら必ずあったであろう逃げまどう人々の描写がほとんど見られないのも物足りないところです(コレは外国人俳優の数が足らなかったからなのでしょう)。

しかし、冗長だろうが大ざっぱだろうが物足りなかろうが、モスラの猛威は止まるところを知りません。ニューカーク市は壊滅寸前でした。

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ネルソンの最期

ネルソンはパニくってました。「当局はネルソンの行方を追っています」とか報道してるラジオを叩き壊し、もう諦めて投降しようと言う手下にビンタを食らわすネルソン。ここ、ネルソン役のジェリー伊藤はマジで中村哲にビンタ食らわせてるようで、めっちゃ痛そう。中村さんが返す「オーケイ、オーケイ」ってセリフもマジで怒ってるっぽいし(笑)

なおも逃走を図ろうとするネルソンですが、自分がこのモスラ騒ぎの元凶であることを見抜かれちゃって、一般市民の方々に車を包囲されちゃいます。追いつめられたネルソンには「小美人を返せ!」と迫る市民たちが、石をコツコツ叩きながら迫ってくるインファント島の原住民とダブって見えはじめます。もう完全に逝っちゃった彼は車を捨てて、銃をぶっ放しながら走って逃げようとしますが、警官が放った銃弾に倒れます。

親分が死んだので、残った手下ふたりはアッサリ降参、小美人の入ったケースを黒スーツに黒い帽子の男に引き渡します。この男、おそらく政府関係者か警察官だと思うのですが、見た目がどうにも怪しい感じがします。それもそのハズ、こいつはダン・ユマでした(笑) クレジットでは”ロバート・ダンハム”なんて名義になってますが、どっから見ても『宇宙大怪獣ドゴラ』の”変な外人”ダン・ユマに違いありません。こんな怪しい奴にいつまでも小美人を委ねておくわけにもいかないってんで、中条たちが駆けつけるんですが……

さて、何をどうすればいいのか見当つかない。ここで不用意に小美人の入ったケースを開けちゃうと、モスラが一目散に飛んできちゃうしね。さァ、困ったぞ。

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平和こそは永遠に続く繁栄の道である

途方に暮れる一同。ちょうど場所は教会の前で、居合わせた神父さんは神に祈り、教会の鐘が打ち鳴らされます。その音につられて、なにげに教会を見上げた中条の目に映ったのは、十字架に重なる太陽の光。その形は、インファント島の碑文に記されていたモスラのマークにソックリでした。また、教会の鐘の音が小美人の歌うメロディにこれまたソックリだってことを花村女史が指摘したことで、中条の頭の中に、あるアイデアが浮かびます。

中条の要請で、ニューカーク市郊外の飛行場に巨大なモスラのマークがペイントされ、街中の教会の鐘が一斉に鳴らされました。その音に引き寄せられるように、飛行場に舞い降りるモスラ。中条の思惑はドンピシャだったようです。中条たちは小美人をケースから出してあげました。

「ありがとう、みなさん。わたしたちはインファント島に帰ります」

中条、善ちゃん、花村女史、そしてダン・ユマたちは、モスラが静かに飛び去るのを笑顔で見送りました。

原作ではこの後、小美人をインファント島に送り届けたモスラが成層圏外に飛び出し反宇宙に消え去る、というモノスゴイ展開になるんですが(コレは後の『ゴジラvsモスラ』のラスト・シーンとして実現することになります)、映画では原住民たちの喜びの踊りと小美人の歌声に導かれるように、例の石碑がズズズーっとセリ上がり、隠れていた一文が姿を現したところで幕を下ろすことになります。

そこにはこう記されていました

「平和こそは永遠に続く繁栄の道である」

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DVDの映像特典について

先にも触れましたが、今回のDVDには映像特典として1974年に東宝チャンピオン祭りで上映された短縮版が収録されてます。101分あったオリジナル版に対し、東宝チャンピオン祭り版は60分、しかも冒頭にハイライト・シーンが数分流れるので、約半分ぐらいにまで縮められてることになります。だもんで、展開が早い早い。まさしく「話が急でビックリしたでしょう」って感じ(笑)

本編の音声は、モノラル音声とステレオ音声が収録され、東宝ビデオのサイトではどちらも”オリジナル”と書かれています。ステレオ音声の方は、この『モスラ』で正式採用されたという”多元磁気立体音響”のことだと思われます。小林淳氏の労作『日本映画音楽の巨星たちI』によると、このステレオ版は全国11の映画館で上映され、序曲も付いていたそうです。序曲は、東宝マーク前の真っ黒な画面に曲だけが流れるモノだったそうで(『2001年宇宙の旅』みたいに)、DVDがステレオ版収録と聞いたときから、トーゼンこの序曲も収録されると思ってたんですが…… 甘かった(笑) ちなみに、この序曲はSLCから出てたサントラで聴くことができます。

オーディオ・コメンタリーは最新作の『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ/東京SOS』にも『モスラ』と同じ中条信一役で出演されてる小泉博さん。佐原健二さんや土屋嘉男さん同様、お歳のせいか言葉が聞き取りにくい部分もありましたが、倉敷さんも今回は映画の内容に即した質問を心がけていたようで、けっこう楽しめました。倉敷さんのことだから『クイズ・グランプリ』の話を振ったりするんじゃないかとヒヤヒヤしながら聞いてたんですが、杞憂に終わりホッとしました(笑)

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