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以下のテキストには”ネタバレ”を含んでいます。閲覧にはご注意ください。

モスラの画像です。

謎の島インファント

南太平洋カロリン諸島近海で発生した超大型台風にモロぶちあたった第二玄洋丸が沈没、インファント島の海岸で生き残った4人の船員が奇跡的に発見されます。ちなみに、彼らを発見したヘリの操縦士は佐原健二ですが、そのヘリが星川航空のモノかどうかは定かじゃありません(笑)

このインファント島はロリシカ国の原水爆実験に使われた島で、”放射能の墓場”なんてアリガタクない異名をいただいてる島でしたが、4人とも放射能の汚染症状はまったく見られず、めっちゃ元気。「原住民が飲ませてくれた赤いジュースのおかげかも」と船員たちは言いますが、ロリシカの調査ではインファント島は無人島のハズで、仮に原住民が住んでいたとしても原水爆実験が行われた島で無事にいるハズがありません。そこで、日本、ロリシカ両国により合同調査団が結成され、インファント島へ赴くことになりました。

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小杉義男伝説

ここで、特撮ファンの間に伝わるヨタ話をひとつ。第二玄洋丸の船長役は小杉義男さんが演じていますが、彼は救助された4人の中には含まれていません。では、彼は船と一緒に南太平洋の海底へ沈んだのでしょうか?

3年後の1964年に公開された『モスラ対ゴジラ』を観たお客さんたちは驚きました。なぜなら、そこに出てきたインファント島の酋長が小杉さんだったからです。彼はインファント島に留まり酋長に収まっていたのですね。先代酋長の娘とでもできちゃったのでしょうか(笑)

また、ややこしいことに、『モスラ』と『モスラ対ゴジラ』の間に公開された『キングコング対ゴジラ』に出てくるファロ島の酋長も小杉さんだったりします。つまり、彼は二つの島の酋長を兼任していたってわけで。なぜそんなことが可能だったのかというと、小杉さん、じつは特命を受けていた”轟天建式隊”の副長で……って、もういいって!(爆)

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大らかな時代のお話

インファント島調査団を乗せた船上、調査団の事務責任者・ネルソン(ジェリー伊藤)は、船に忍び込んでいた日東新聞の記者・福田善一郎―通称”スッポンの善ちゃん”(フランキー堺)を見つけます。マスコミのシャットアウトを公言していたネルソンはめっちゃ怒って銃を突きつけますが、たまたまネルソンに会いに来た言語学者の中条(小泉博)に助けられ、日本側の隊長である原田博士(上原謙)の口利きで警備員として調査団に加わることを許されます。

政府がらみの調査団に密航者を参加させるとは、良く言えば大らかな、悪くいえばイイカゲンな、そんな時代だったんですね。帰国後も善ちゃんは上司の天野デスク(志村喬)にお灸を据えられたぐらいで、厳しいお咎めもなかったようですし。もっともコレは映画の中のお話で、実際にこんなことが起きてたら、いくら昭和元禄の時代でも刑務所ぐらいにはぶちこまれてたでしょうけど(笑)

インファント島に着いた一行は放射能防御服に身を包み、島内を探索します。島には、原水爆実験が行われたとは思えないような緑の森が広がっていました。みんなとハグレた中条は不思議なカビが群生する洞窟に迷い込み、そのカビが赤いジュースの原料だと推測。また、見知らぬ文字で書かれた石碑を発見したりもします。

石碑の方はこの後、映画の展開に大きく関わってきますが、カビの方はいっさい触れられることはありません。カビと赤いジュースの関係も、赤いジュースと放射能の関係も、まったく解明されないまま物語は進み、そして終わっちゃうことになります。ま、この先、身長30センチの小人やら、体長100メートル以上のイモ虫やらが出てくるわけで、カビだジュースだなんて言ってられないこともわかるんですが…… 大らかな時代だったんですなァ(爆)

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小美人との出会い

道に迷ったんなら救助が来るのをおとなしく待ってりゃいいものを、30越えても好奇心旺盛な中条は更に森の奥深くへと足を踏み入れます。ところが、言わんこっちゃない、吸血植物に襲われて気を失っちゃうんでやんの(笑)

気がつくと、中条は調査団のテントの中に寝かされていました。中条は、身長30センチぐらいの小人の女に助けられたと言いますが、原田博士は錯覚だろうと取り合ってくれません。この先数十年、現在に至るまでモスラとセットで語られることになる”小美人”というネーミングは、このとき善ちゃんが考案したモノです。

「ブン屋的表現。若い女はみんな美人と書きますからね。ちっちゃけりゃ”小美人”とこうきちゃう」

翌日、ホントに小美人がいたことを証明するため、中条は防御服に仕込まれた警報ベルを鳴らします。前の日に彼女らが現れたのは、吸血植物に襲われたときにも鳴らしたこのベルの音色に引き寄せられたモノに違いないと、中条は考えたのです。案の定、小美人(ザ・ピーナッツ)は姿を現しました。

まるで歌のように聞こえる彼女たちの言葉は、中条に言わせると、どの言語体系にも属さない暗号のようなモノなんだそうです。そのくせアッサリと「島を荒らさないでと言ってるみたいですね」と決めうちするところは、さすが新進気鋭の言語学者だけある(笑)

中条たちが「もう荒らさないよ」と答えると、小美人はニッコリ笑って森へ戻ろうとしましたが、ネルソンは彼女たちを捕まえちゃいます。資料として持ち帰ることを主張するネルソンと、そりゃかわいそうだと言う中条や善ちゃんたちが言い争ってる間に、一行は原住民に包囲されていました。原住民は石をコツコツ叩きながら不気味に近寄ってきます。ネルソンがしかたなく小美人を放すと、原住民たちはおとなしく引き下がりました。

森の中へ消え去った小美人を見送りながら、善ちゃんは呟きました。「こういう島はそっとしときたいですね」

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発光妖精とモスラ

初期の東宝怪獣映画には、『ゴジラ』の香山滋、『空の大怪獣ラドン』の黒沼健のように、小説家や劇作家が考えた原案を映画用に脚色するという手法が少なからず見られます。『モスラ』のストーリーは、東宝から依頼を受けた純文学作家の中村真一郎が、作家仲間の福永武彦と堀田善衛に声をかけて、3人のリレー小説という形で発表した『発光妖精とモスラ』を、関沢新一が映画用に脚色したものでした。

原作と映画とでは、ストーリーの大筋はほとんど同じですが、変更されている点もモチロンあります。たとえば、原作に出てくる発光妖精―アイレナは四姉妹と設定されています。コレを二人にしたためにザ・ピーナッツが起用されたのか、はたまたザ・ピーナッツに合わせて二人にしたのかはわからんのですが、どっちにせよ、このザ・ピーナッツの起用は大当たりで、彼女たちは『モスラ対ゴジラ』、『三大怪獣/地球最大の決戦』でも小美人を演じることになります。

また、善ちゃんのキャラもけっこう違ってます。新聞記者というのは同じですが、原作ではフランキー堺というより宝田明が扮した方が似合うような二枚目のキャラとして描かれています。しかし、ソレだと小泉博の中条とキャラが被るし、子供受けすることも狙って、映画では三枚目寄りの性格を付与したのでしょうね。原作の善ちゃんは調査隊に参加せず、後に単独でインファント島に渡り、映画では語られないインファント島の創世神話を採集したり、モスラの孵化を見届けることになります。ちなみに、”福田善一郎”という名前は、原作者3人の名前を混ぜ合わせたモノなんだそうです。

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なにもせんほうがええ

調査隊は日本へ帰ってきましたが、小美人のことは誰も喋ろうとはせず、公式発表も一切ありませんでした。「なにもせんほうがええ」と全員が渡老人状態になったのです(笑) ただ一人、ネルソンを除いて……

中条の調べたところによると、今回のインファント島調査をロリシカ政府に強く働きかけたのはネルソンだったようです。ネルソンの過去はベールに包まれていて、出てくるのは有尾人の探検で名を挙げたとかいった怪しい噂ばかり。善ちゃんは船内のネルソンの部屋で古地図のようなモノを見たことから、国際古美術ブローカーなのではと推測してます。

そういえば、と中条はインファント島で書き写した石碑の碑文を善ちゃんに見せました。ところどころに記されている太陽のような文字(ってゆーか、マーク?)を指さし、「なんです、こりゃ」と尋ねる善ちゃんに中条は「モスラ……」と答えますが、意味はわからないようです。

ネルソンは手下たちを連れて再びインファント島に渡り、例のベルの音に誘われヒョイヒョイ出てきた小美人をアッサリ捕まえました。前と同じように石をコツコツ叩きながら現れた原住民たちにネルソン一派は容赦なく銃を撃ち込み大虐殺。撃たれた原住民のひとりは最後の力を振り絞って、祭壇のようなところまで這い進み、叫びました。

「モスラ!」

その叫びに応えたかのように雷鳴がとどろき、祭壇の上の方の土砂が崩れ、そして…… 巨大な卵が現れました!

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ザ・小美人ショー

ネルソンは小美人を日本へ連れ帰り、こともあろうに見せ物にしちゃいます。ロリシカ政府も何を遠慮してるのか、「自国民の利益を保護する」とかって、ネルソンを擁護する声明を出しました。

「皆さん、今は原子力の時代になりました。けれども皆さん、神秘は昔のことでしょうか? そして奇跡は言葉だけのものでしょうか? わたしが南海の孤島で発見した素敵な妖精を紹介しましょう」

大観衆で溢れかえった中央劇場の舞台に立たされた小美人は歌います。

♪モスラ〜ヤ モスラ〜 ドゥンガンカサクヤン インドゥムゥ〜

伊福部昭が大映の超大作『釈迦』に掛かっていたため、『モスラ』の音楽は古関裕而に委ねられました。そのおかげで、この日本人なら誰もが知ってる『モスラの歌』を含む、素晴らしい名曲の数々が生まれることになったのです。

小美人の歌声は遠く海を隔てたインファント島まで届き、原住民たちは祭壇の前でモスラを呼ぶ踊りを始めます。日劇ダンシングチームによる東宝特撮ならではのダイナミックな群舞は、古関氏の叙情味を交えたエキゾチックでリズミカルな音楽と相まって、いつ観ても、何度観ても、素晴らしいの一語につきるシーンを作りだしています。”総天然色”という言葉は、こーゆー場面にこそ似つかわしい言葉ですよね。

平成以降の作品で、こうした群舞シーンが見られなくなったことは本当に残念でなりません。『ゴジラ・モスラ・キングギドラ/大怪獣総攻撃』のDVDの映像特典として収録されていた特ヲタ座談会の中で、押井守氏がこの群舞シーンの復活を望んでいましたが、わたしもソレを切に願うひとりです。

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モスラが来ます

小美人ショーの会場には善ちゃんと、同僚のカメラマン・花村女史(香川京子)、弟の信二(田山雅充)を連れた中条の姿も見えました。善ちゃんと中条は、小美人をこのままにしておけないと、ネルソンのところに押しかけます。先に乗り込んでいた花村女史も加えてネルソンに猛抗議しますが、ネルソンは素知らぬ顔。しかしまァ知らぬ仲でもないし、ちょっとだけなら小美人に会わせてやろうと楽屋に通してくれます。

このとき、カメラは置いていけというネルソンの手下に、「うるさいわね、あげるわよ!」と勝ち気に返す花村女史がイカしてるゥ。「カメラから覗いた現実しか信じませんわ」などと宣うモダンなお嬢さん、でも性格は勝ち気なの、って典型的な東宝キャラの花村女史……萌えます(笑) といっても、香川京子は東宝の専属女優さんじゃないんですが。ちなみに花村女史、原作では中条の助手ってことになってます。

鳥かごのような檻の中に入れられた小美人は、中条を覚えていました。そして彼女たちは驚くべきことに中条たちと日本語で会話ができたのでした(中条はテレパシーのようなモンだろうと推測します)。彼女たちは哀しんでいました。

「わたしたちは必ず島へ戻れます。でも……わたしたちが助かるために、この国の罪のない人たちに大きな不幸が起こります」

どーゆーこっちゃと訝しがる善ちゃんたちに小美人はこう答えます。

「モスラが来ます」

折しもインファント島では原住民たちの踊りが最高潮に達し、それに呼応したかのように卵が割れました。

モスラが誕生したのです。

ここから先は……後編に続く

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