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以下のテキストには”ネタバレ”を含んでいます。閲覧にはご注意ください。

海底軍艦の画像です。

ここから後編です。

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ロリ顔の皇帝

ここで、神宮司大佐最大最強のライバル、ムー帝国皇帝が登場します。このムー帝国皇帝、神宮司大佐より更に出番は少ないというのに、存在感ではヒケを取りません。ってゆーか、ムー帝国皇帝を演じた小林哲子さん自体、東宝特撮映画にはこれ1作しか出てないのに、水野久美さんや白川由美さん、若林映子さんたちと並び、堂々と特撮美女殿堂に名を連ねてらっしゃるのですから(みやこ認定)、これはもう何をか況やです。

とにかく、その立ち居振る舞いが超高ビーなのにイヤミじゃないっていう、完璧に女王様してるところが素晴らしい。最後の方で轟天号の中に連れ込まれてからの一連の動き、「神宮司、ムダな抵抗はやめよ」と言いながら、なにげに一番いい席(たぶん艦長席)に座るところの自然さは、もう完璧すぎてため息が出ます。

それと、メイクのケバさでごまかされ気味なのですが、哲子さんってよく見ると童顔なんですよね。ロリ顔と女王様演技とのアンバランスさにめっちゃ萌えるわけです。あの顔、あの口調で「マンダの生け贄にせよ!」なんて言われた日にゃ、わたしゃ自ら喜び勇んでマンダの口の中に飛び込んでしまうでしょう(笑)

真琴役の藤山陽子さんが典型的な東宝タイプのお嬢さんで”お子さま&お母さん対応”のヒロインだとすれば、哲子さんは間違いなく”お父さん対応”の配役です。この頃の東宝特撮映画では、このような布陣の女優編成をよく見かけます(『怪獣大戦争』の沢井桂子&水野久美とか)。さすがは”家族そろって楽しめる東宝映画”、いろいろ気を使ってるわけです(笑)

ぼくらの海底軍艦 轟天号

「海底軍艦はただいまより、ムー帝国撃滅のため出撃します !」

東宝特撮映画史上、これほど我々の心を熱くしたセリフがあったでしょうか?

いや、ない!

”漢”メーター振り切って、燃える心を更にヒートアップさせる伊福部マーチに乗り、海底軍艦・轟天号は空を行きます。

ぼくらの海底軍艦 轟天号 轟天号

空だって飛べるんだ 轟天号 轟天号

ドリルが回ってとっても強いぞ 轟天号 轟天号

マンダなんか怖くないぞ 轟天号 轟天号

キチガイ艦長 神宮司 神宮司

海底帝国 やっつけろー

あ、この歌は実際に映画の中で流れてたわけじゃありません。1980年前後の東宝特撮映画空白期は、同時に特ヲタ異常繁殖期でもあったわけですが、その頃に行われたダイコンIIIだったかIVだったかのチラシに載ってたものです(ウロ覚えなんで歌詞は違ってるかも)。

わたしは、数ある東宝特撮メカの中で、この轟天号が一番のお気に入りです。なんでって、カッコエエやん。小松崎茂画伯デザインによる、独創的でいてシンプル、無骨にして流麗なそのフォルムはまさしく日本男児の夢の結晶といっても過言ではありますまい。

先端のドリルがただ地中を掘り進むためだけではなく、スクリューの役目も兼ねているところや(子供の頃はコレがわからず、なんで海の中でドリルを回すのか不思議でした)、掘り砕いた土砂を後方の排出口から吐き出すギミックは、まさにセンス・オブ・ワンダー! コレにシビれてこそ男の子ってもんでしょう(そうか?)

そういえば、80年当時は『海底軍艦』が上映されると必ず轟天号が飛翔するシーンでカメラのシャッター音がアチコチから聞こえたものでした。1983年の”ゴジラ復活フェスティバル”のときなんかニュープリントだったせいもあってか、うるさいぐらいカシャカシャ鳴ってましたな。DVDはおろか、LDもビデオすら出てない頃で(出てたとしても何万円もしてたし)、みんな轟天号の勇姿を自分のモノにしようと必死やったんですよね。今はこうしてDVDでいつでもお手軽に観ることができます。いい時代になったもんやなァ(うんうん)

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本多演出の真骨頂

轟天号が出撃したのと前後して、ムー帝国の本格的な攻撃が開始されました。最初の攻撃目標は、なぜか大島。なんでわざわざ、こんなローカルなところを狙ったりするんでしょうか? その答えは…… わかりません(笑) きっとムー帝国にとって、よほどワケアリな事情があったのでしょう。ロケ地とのタイアップの都合上、なんて無粋なことは考えないようにしましょうね(苦笑)

そして、お次がいよいよ、この映画の特撮パートの白眉とも言える丸の内の大陥没シーンです。「午前0時に注目せよ」というムー帝国工作隊23号の予告を受け、丸の内に集結した自衛隊。高田稔、藤田進といったお馴染みの東宝俳優軍長官クラスの顔も見えます。予告時間が刻々と迫り、それに比例して徐々に高まる緊張感。頭上から爆音が聞こえてきて、緊張感は頂点に達します。

ムーか!?

「友軍機上空哨戒中」って通信兵の言葉でホっと一息ついたところへドドドーンと来る。

陥没シーン自体は一瞬のうちに終わるんですが、そこに持っていくまでの緩急つけた演出こそ本多猪四郎監督の真骨頂といえるでしょう。この本多演出と、緻密に計算された円谷特撮の妙がカタルシスを産み、わたしたちの心をワシ掴みにするのです。本多・円谷両監督が初めてコンビを組んだのは1953年の『太平洋の鷲』。『海底軍艦』はちょうど10年目の作品ということになります。東宝が世界に誇る最強タッグの、最も脂がのりきっていた時期に作られた作品だったのではないでしょうか。

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悪役はマヌケであるべし

丸の内を壊滅させた後もムー帝国は攻撃の手を休めません。ムー帝国のナンバー2である猊下(天本英世)自ら指揮を執る石棺型潜行艇で東京湾を火の海に変えます。この潜行艇には23号とトップ屋まで乗ってる特ヲタ泣かせの超豪華布陣。この「天本・平田・佐原」トリオがどれぐらい豪華なのかを阪神タイガースで例えると、「バース・掛布・岡田」のクリーンアップみたいなもんです(笑)

これほど凄いムー・トリオですが、飛来した轟天号を見るなりスタコラサッサと逃げてしまいます。このことからも、いかに彼らがこの海底軍艦を恐れていたかがわかるでしょう。轟天号は石棺型潜行艇を追跡し、ムーの海底帝国を突き止めます。

その頃、捕らえられていた高島たちは運良く皇帝陛下を人質に取り、脱出に成功。「悪役はマヌケであること」は東宝特撮映画の伝統ですが(ミステリアンしかりX星人しかり)、高島ごときにしてやられるムー帝国もそうとうマヌケです。バックスクリーン3連発級の破壊力を持つムー帝国でさえ、伝統の力には抗えないんですね(笑)

余談ですが、高島や真琴と一緒に脱出する土木作業技師役は伊藤久哉と桐野洋雄でして、この「高島・伊藤・桐野」組と「天本・平田・佐原」組の役どころをそっくり入れ替えてもなんら違和感ないと思うのはわたしだけでしょうか(笑)

マヌケといえば、轟天号にちょっと巻きついただけで冷線砲でアっという間に凍らせられる怪竜マンダもヒジョーにマヌケな奴です。ムーの守護神と崇められてるくせに、役どころは轟天号の咬ませ犬。その立場は大ダコや大コンドルと大差ないように思います(苦笑) この映画の”主演怪獣”が神宮司大佐であることが、このことからもわかるでしょ?

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余は殺せても、ムー帝国の心臓は殺せん!

マヌケ揃いのムー帝国にあって極めつけのマヌケは、じつは皇帝だったりします。高島たちに逆に拉致られ、轟天号の中に連れ込まれる皇帝。

ホントはココで、拉致られる際に脱ぎ捨てたハズの女王様衣装を艦内で知らん顔して着てる、ってツッコミを入れる予定だったんですが、『映画秘宝』に先を越されたので割愛します。……って、シッカリ書いてるねんけど(笑)

ココで先に述べた「ムダな抵抗はやめよ」のシーンに繋がるわけですが、神宮司大佐がせっかく話し合いによる解決を持ちかけてるのに、「余は殺せても、ムー帝国の心臓は殺せん!」なんて強がり言うもんだから、”ムーの心臓”すなわち地熱を利用した動力室に目をつけられちゃうんです。

ドリル魂フルスロットルで、海底から更に地中深くにある動力室にいともたやすくたどり着く轟天号。冷線砲で動力機関を凍りつかせ(ついでにライフル型の手持ち冷線砲でムー人たちを凍らせたりもします)、洋上へ浮上した轟天号の目の前で、高島たち挺身隊が仕掛けた爆弾が大爆発。言うなれば皇帝自らムー帝国のトドメを刺したようなモンです。手下もマヌケなら守護神もマヌケ、オマケに皇帝までマヌケなムー帝国。滅びゆく運命にあったのは自然の理(ことわり)だったのでしょう。

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ムー帝国は彼らの祖国か?

『海底軍艦』は「明るく楽しい東宝映画」のキャッチフレーズに恥じない娯楽大作ですが、最後は悲愴感たっぷりに幕を閉じます。

大爆発し炎上する海、冷線砲で凍りついた石棺型潜行艇を、轟天号の艦橋からジっと見つめるムー帝国皇帝。彼女は艦橋を駆け下り、海に飛び込みます。天野兵曹たちは止めようとしますが、神宮司大佐は「帰らせてやれ」と命じます。

燃えさかる炎に向かって泳ぎ続ける皇帝ですが(赤い髪のおかげで遠目からでもわかります)、やがてその姿は海中に消え去ります。しかし、勝利者であるハズの神宮司大佐と轟天号のクルーたちから高らかな勝利の凱歌を聞くことはできません。むしろ、彼らの表情は悲痛でした。

ムー帝国がかつて存在した場所は、日本が戦前に統治していた南洋群島と重なります。ムー帝国の出典は先に述べたようにチャーチワードの著書にあるわけですが、脚本の関沢新一さんはソレに、太平洋戦争の大義名分であった大東亜共栄圏を重ね合わせていたのではないでしょうか。ムー帝国の正体は、じつは戦前の日本だったのです。そして皮肉なことにムー帝国は帝国海軍の残党に滅ぼされます。

神宮司大佐は出撃前に「錆びた鎧を脱ぎ捨て、せいせいした」と言いますが、はたしてソレは本心だったのでしょうか? あるいは、そのときには本気で言ったものだとしても、ムー帝国の最期を看取ったときに彼の考えは変わったのではないでしょうか? 「俺はまだ錆びた鎧を脱げないでいる」と。だからこそ、彼らは哀しかったのだと思います。愛してやまなかった祖国を、自らの手で消し去ってしまったのですから。

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DVDの映像特典について

このDVDには映像特典として、1968年に『怪獣総進撃』の併映として再公開された際の短縮版が収録されています。わたしは1962年生まれなので、『海底軍艦』はこの短縮版を先に見た可能性が高いと思います。

オリジナル版と大きく違うのはオープニングの流れです。

  1. 東宝マーク
  2. タクシー内での土木技師とムー帝国工作隊23号のやりとり
  3. PR写真撮影中の高島たちの前に蒸気人間現る
  4. そこへタクシーが突っ込んできて海に突っ込む
  5. タイトル
  6. 翌朝の現場検証

というのがオリジナル版の流れですが、短縮版では、「1.東宝マーク」の後にいきなり「5.タイトル」が入り、「6.現場検証」の合間に「3.蒸気人間現る」と「4.海に突っ込むタクシー」の件が回想として挟み込まれるという形になっています(「2.タクシー内の描写」は丸々カットされてます)。

それと、田島義文の案内で轟天建武隊の秘密基地に向かう途中でジープが砂にのめりこみ立ち往生〜佐原健二がボーキサイトなどの鉱脈を見つける、ってシーンもカットされてます。

あとは各シーンをちょっとずつ摘んでるんですが、それで割を食ってるのが藤木悠。東宝特撮における藤木さんの役回りは「間が抜けたコメディ・リリーフ」としてお笑い部分を一手に引き受けるというものですが、そのギャグ部分をカットされてるので、なんの値打ちもないという。短縮版しか見たことない人には「この人、なんで出てるの?」と疑問しか残らないこと必至でしょう(笑)

余談ですが、その藤木さん、『ナイン・ソウルズ』で久々に元気なお姿を拝見しましたが、往年と変わらぬマヌケな演技にニンマリさせていただきました。

オーディオコメンタリーはこの映画の監督助手だった梶田興治さん。本編の監督助手ですが、意外と特撮のお話(最後の爆破シーンはカメラを逆さにして撮ったとか)が面白かったのが儲けモノでした。梶田さんは『キングコング対ゴジラ』に続くオーコメ登板で、そんときは藤木さんとのダブル・キャストでしたが、コレも余談。それにしても、”オーコメ”って書くとなんかドキドキしますね。おっと、コレはもっと余談でした(爆)

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