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以下のテキストには”ネタバレ”を含んでいます。閲覧にはご注意ください。

海底軍艦の画像です。

もうひとつの世界へ

の蒸気人間、の土木技師連続失踪事件、のイケてる美女と彼女をつけまわすの男、の帝国海軍秘話 ……と、この映画の序盤は、謎・謎・謎のオンパレード

お話はわたしたちが普通に暮らす世界と地続きの世界観の中で進むのですが、ソレは徐々に”もうひとつの世界”へと移行していきます。

ムーからの警告

イケてる美女・真琴(藤山陽子)と、彼女の育ての親である元帝国海軍技術少将・楠見(上原謙)は、ムー帝国工作隊23号と名乗る男(平田昭彦)に拉致られそうになったところを、カメラマンとその助手(高島忠夫&藤木悠の極楽コンビ)に助けられます。謎の蒸気人間は地上征服を企むムー帝国の工作員で、土木技師連続失踪事件もどうやら彼らの仕業だったようです。

事件を追っていた刑事(小泉博)は、カメラマンたちから聞いたムー帝国とか蒸気人間とかの話を半信半疑で聴きますが、そこへ件の23号から小包が届きます。ここで、「爆発物かもしれないから私が」と警察の係官が登場するのはいいんですが、その場で封を開けようとするのは如何なものか? そーゆーところに立ち会ったことがないんで詳しいことは知りませんが、フツー爆発物を処理するときはソレナリの隔絶された部屋の中で行うとか、少なくとも民間人を遠ざけるぐらいのことはすると思うんですが。ま、幸いにも小包の中身は危険物ではなく映画のフィルムだったので、めでたしめでたしだったんですけどね(って、そーゆー問題か?)

送られてきたフィルムには、ムー帝国の概要が記録されていました。アニメを使ったり、伊福部昭のBGMまで収録された、立派な出来映えのプロモーション・フィルムだったのです。

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海島冒険奇譚 海底軍艦

『海底軍艦』は押川春浪が明治33年(1900年!)に発表した冒険小説が元になってます。日本最初のSF小説と呼ばれることもある作品ですが、映画版との関連性はほとんどありません。「海軍大佐が少数精鋭の部下と共に絶海の孤島で秘密の超兵器を建造してる」って部分だけが同じで、あとはまったく別モンと思っていいです。

時代設定が違うのは当たり前として、登場人物もまったく違うし、海底軍艦の名前も性能も違います。海軍大佐は、原作では桜木という名前でスマートなエリート将校って感じですが、映画版では後述するように無骨な頑固オヤジの神宮司さん。海底軍艦は、原作では電光艇と呼ばれ、先端にドリルは付いてるものの、飛行能力は備わっておりません。

また、”敵”も原作ではヨーロッパの強国(ロシア?)が操る海蛇丸という海賊船で、ムー帝国の”ム”の字も出てきません。ソレもそのハズ、ムー大陸の言いだしっぺはジェームズ・チャーチワードという”自称”元イギリス陸軍大佐という人なのですが、彼が最初にムーのことを綴った『失われた大陸ムー』が出版されたのは1931年のことなのです。日本ではその翌年に早くも『サンデー毎日』で紹介されたそうですが、それでも『海底軍艦』の出版より30年以上も後のことなので、”ム”の字も出てこないのは当たり前ですよね。

映画が製作されたのは冷戦まっただ中の1963年。まさか原作通りロシア(当時はソ連ですね)を思わせる敵は出しにくいでしょうし、宇宙人は『地球防衛軍』や『宇宙大戦争』で既に使っちゃってるし。それじゃあってんで脚本の関沢新一さんは、ご自分の頭の引き出しからムー帝国を引っぱり出し、押川春浪の『海底軍艦』に融合させたのです。この目論見は大成功し、明治の海島冒険奇譚は、昭和元禄の世にSF―スーパーファンタジーとして甦ったのでした。

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ムー帝国の暴威

送られてきたフィルムによると、ムー帝国は大陸が海に沈んだ後もその優れた科学力により、海底で存続しているのだそうです。そして、地上はすべてムー帝国の植民地なので、そろそろワシらに返してもらおやないか、と迫ります。

これよりあとに、ムー帝国で落盤事故が起こるシーンが描かれるところから、どうやらムー帝国は水没以来2度目の危機に直面してるようで(冒頭の土木技師拉致事件はココに結びつきます)、何万年も前に沈んだとされるムー帝国が今頃になって地上へ出たがってる原因もココにあるようです。

ムーのフィルムは日本以外の主要各国にも送られていて、さっそく国連で対応会議が開かれますが、わずか10分で無視することに決定。怒ったムー帝国は世界中の洋上で艦船への無差別攻撃を開始し、また海に面したベニスや香港などを壊滅させたり大暴れ。

ムー帝国の石棺型潜行艇は見た目の割に高性能で、世界最新鋭の原潜レッドサタン号でも歯が立ちません。そこでクローズアップされたのが”海底軍艦”でした。フィルムを通じてムー帝国は、地上返還とは別に、海底軍艦の建造を即時中止せよとの要求も突きつけていたのです。

どうやらムー帝国は、この海底軍艦にヒジョーな恐怖心を抱いているらしいのです。強大な力を誇るムー帝国が恐れるほどの海底軍艦とは、一体なんぞや?

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帝国海軍秘話

太平洋戦争敗戦の日、帝国海軍きっての潜水艦乗りにして造船技術にも長けた神宮司大佐は反乱を起こし、潜水艦イ号403潜とともに日本から離脱、消息を絶ちました。

この”イ号400”型の潜水艦は、もともとパナマ運河攻撃を念頭において建造されたそうで、航続距離の長大さ、火力の充実度、そして水上攻撃機を搭載していたことから、”潜水空母”と呼ばれていたそうです。イ号405潜までが製造ラインに乗りましたが、竣工したのはイ号400潜から402潜までの3艦のみで、404潜と405潜は完成前に自沈または解体されました。

イ号403潜は実際には製造されてないんですが、映画の中では秘密裏に製造され、完成したことになってます(なにが原因で製造されなかったのかまでは調べてません。ご存じの方はお教えくだされば幸いです)。

日本を離れたイ号403潜はムー帝国に拿捕されますが、乗組員たちはその前に脱出し、南洋の孤島に秘密基地を構え、そして海底軍艦・轟天号の建造に取りかかったのです。ムー帝国が海底軍艦の存在を知っていたのは、その下図がイ号403潜に残されていたからで、真琴と楠見を襲ったのは、神宮司大佐が真琴の実父にして楠見の部下だったからなのです。

折りもおり、真琴をつけまわしていた男が神宮司大佐の部下だったことが判明。この男の案内で、わたしたちは完全にスーパーファンタジーの世界へ足を踏み入れることになります。その夢の世界への案内人は叩き上げ感100%な天野兵曹! 演じるは田島義文!!……って、ちょっとイヤかも(笑)

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大怪獣ジングージ

天野兵曹の先導で、楠見、真琴、カメラマンとその助手、刑事、そして彼らの周囲でウロチョロしてたトップ屋(佐原健二)ご一行は、ついに海底軍艦の基地にたどり着きます。彼らを迎えるのは、轟天建武隊! いよいよ神宮司大佐の登場とあいなります。

『海底軍艦』といえば神宮司大佐、神宮司大佐といえば『海底軍艦』、この人なくして『海底軍艦』は語れません。扮するは、頑固一徹な職業軍人を演じさせたら東宝俳優軍の中で並ぶ者がいない田崎潤!

神宮司大佐は初登場シーンこそ遅いものの、画面に登場するやいなや高島忠夫扮するカメラマンから主役の座を奪います。物語の前半ではその存在のみが語られ、姿を現してからはその圧倒的な存在感で画面を独り占めにする、という図式から、あなたは何を想像するでしょう。ゴジラをはじめとする怪獣たちを頭に思い描きませんか?

1954年の『ゴジラ』では、ゴジラは前半、大戸島の伝説として語られるだけですが、後半では2度に渡り東京を遅い、帝都を蹂躙します。他の怪獣映画もだいたい同じような構成でお話は進みます。この『海底軍艦』は一般的に特撮映画と呼ばれることはあっても、怪獣映画とは呼ばれません。しかし、わたしは声を大にして言いたい!

『海底軍艦』は大怪獣ジングージが主役の怪獣映画なのだと!!

……って、なにをしょーむないこと力説してるんでしょーか、わたしは(笑)

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神宮司対楠見

『海底軍艦』が怪獣映画である証拠に、神宮司大佐はいろいろな敵と激しい攻防を繰り返します。ゴジラが、自衛隊やキングギドラと戦ったように。

最初の敵は、帝国海軍時代の上官・楠見。

  • 「(楠見に酒を注ぎながら)さ、少将」
  • 「その少将はやめてくれ。古傷に触られるようでタマランよ」
  • 「古傷ですって?」
  • 「日本は戦争放棄を宣言したんだ。新憲法でね」
  • 「誰がさせたのです?」
  • 「なに?」
  • 「少将は変わられましたな。自分のいわば反乱にも等しい計画を黙認し、責任はワシが取ると仰った、その時の気持ちはどこへ行ったのです」
  • 「戦後20年という時間が我々に考える時を与えてくれたんだ」
  • 「では海底軍艦は無用の長物だと言われるんですか?」
  • 「誰が無用の長物と言った。必要があればこそ、こうして出かけてきたんではないか。海底軍艦は決してムダではない。世界がそれを要求しとるんだ」
  • 「お断りします!」
  • 「貴様、まだわからんのか!」
  • 「お断りします。神宮司は日本海軍のために海底軍艦を建造したのです!」
  • 「世界は変わったんだ!」
  • 「だから、海底軍艦でまた変えます!」
  • 「バカな。世迷い言はやめろ!」
  • 「世迷い言…。祖国を愛する心を世迷い言だと言うのですか?」
  • 「世界的見地に立てと言ってるんだ」
  • 「神宮司は悠久の大儀に生きる信念です」

世界平和のため海底軍艦・轟天号の出撃を要請する楠見と、轟天号は日本が再び世界に雄飛するためにあるのだと譲らない神宮司大佐。この楠見との遣り取り(劇中では2度やりあいます)は、田崎潤と上原謙という2大俳優の名演がもう素晴らしすぎて、観てるこっちもめっちゃ力が入るところです。

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真琴の涙

楠見との対決では一歩も引かなかった神宮司大佐ですが、続く愛娘・真琴戦では苦戦を強いられます。なにしろ相手は20年ぶりに再会した実の娘であり、イケてる美女に変貌を遂げているのですから、これはもう苦しい戦いになることは目に見えてます。そのうえ、真琴には”涙”という最強兵器があるし、伊福部昭の哀しげな音楽さえも味方に付けてるのですから、とうてい勝ち目はありません。

「嫌い、嫌い、大嫌いです!」

この真琴が放ったカウンターでヨレヨレになった神宮司大佐は、あろうことか「キチガイ!」という罵倒パンチ(しかもヘナチョコ・パンチ)しか武器を持たない高島忠夫にさえ敗れる始末。

考えてもみてください、田崎潤と高島では”格”が違いすぎます。世界チャンピオンとトミーズ雅ぐらいの力の差はあるでしょう。「キチガイ!」と言っただけで勝てるのなら、「三大怪獣 地球最大の決戦」の大村千吉だって勝てます。通常なら1ラウンドであっさりKOしてしまえるハズの高島にさえ敗れるんですから、真琴の放った一撃はよっぽど効いてたんだと思われます。

しかし、そこは百戦錬磨の神宮司大佐、一度や二度の敗戦にいつまでもふさぎ込んでるようなオヤジじゃありません。ムー帝国のスパイだったトップ屋が仕掛けた爆弾で轟天号のドックを爆破され、真琴を連れ去られたことで、闘いの牙をむける相手がムー帝国であることを悟り、大いに奮起するのです。

一方、神宮司大佐を自分の力で倒したとカン違いして有頂天の高島は、真琴を助けようとするもののトップ屋にあっさりやられちゃって、真琴ともどもムー帝国に拉致されるテイタラクぶりを発揮。神宮司大佐を倒した一撃が、文字通り”出会い頭の一撃”だったことが、これで証明されたわけです。

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長くなってきたので、ここから先は……後編に続く

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