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以下のテキストには”ネタバレ”を含んでいます。閲覧にはご注意ください。

イン・ディス・ワールドのポスターの画像です。

この映画は、アフガン難民の少年がロンドンにたどり着くまでの、一種のロード・ムーヴィーです。ってゆーより、”スゴロク・ムーヴィー”って呼んだ方がいいかも(笑) パキスタンの難民キャンプを振り出しに、イラン〜トルコ〜イタリア〜フランスを経て、上がりのイギリスを目指す6400キロの過酷すぎるスゴロク。だもんで、サイコロの目が悪けりゃ「振り出しに戻る」なんてことまであったりするし、もっと悪けりゃ途中でゲームセットになっちゃう(つまり、死んじゃう)こともあったりします。

監督のウィンターボトムは、「イギリスのドーバーに入港したコンテナ内から、不法入国しようとした中国人58人が遺体で発見された」ってショッキングなニュースから、この映画を思い立ったそうです。

「移民を目指す人々はすごい大金を投資し、命を賭けながら、新しい人生を踏み出そうとする。そんな彼らの旅が描ければ、真実を描いた映画が作れると思ったんだ」(公式サイトから引用)

彼が言うように、この映画で描かれる難民たちの姿は真実に近いモノなのでしょう。画面には、最初から最後まで、難民たちが直面する痛々しい現実がドキュメンタリー風に映しだされます。ってゆーか、わたしは監督がウィンターボトムって以外ほとんど予備知識を持たずにこの映画を観たので、中盤あたりまでマジでドキュメンタリーだと思ってたぐらいです。出演者もいかにも素人って人ばかりで、とても演技してる風には見えません。たぶん監督は彼らに対して、演技指導のようなことはほとんどしなかったんだと思われます。そんな彼らの行動や表情をハンディカメラは、ドラマチックな演出も無しに、淡々と追い続けます。

難民たちは(わたしたちから見れば)地獄のような日常に生きていて、主人公の少年は常に死と隣り合わせのところにいます。実際に彼の同行者は、先に書いたドーバー事件を再現したシーンで死んじゃうし。でも、この映画からは不思議と陰惨さは感じられません。それは、この映画に登場する難民たちが常に前を見つめて生き続けているからに他ありません。主人公の少年は英語が話せ、体力も忍耐力も判断力も人並み以上のモノを持っています。それらはたぶん、生きていくため身につけざるを得なかったモノであり、そして少年の行動力を生み出す原動力になっているのです。

行動力は生命力と呼び変えてもいいでしょう。少年の身体から発せられるその生命力の輝きが、この映画から陰惨さをぬぐい去る要因となっているのです。陰惨さを感じないため、わたしたちはこの映画を「かわいそうな難民の物語」ではなく「前を向いて生きる少年の物語」として捉えることができ、この少年と一緒に過酷な旅に挑むことができるのだと、そう思うのです。

主人公を演じるジャマール君は実際に難民キャンプで育った少年だそうで、「彼は撮影終了後に再びロンドンに渡り、難民保護の申請をしたけど認められなかった」なんてことが映画の最後にクレジットされます。このクレジットにより、この映画が完全なフィクションだったことがわかるわけですが、同時に実在の世界と繋がってることも知らされることになります。映画の中のジャマール君はロンドンまでたどり着きましたが、実在する彼のスゴロクはまだ終わってないことが最後の最後にわかるのです。ジャマール君に、そして、世界に1500万人いるという難民たちに、”上がり”はあるのでしょうか?

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