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以下のテキストには”ネタバレ”を含んでいます。閲覧にはご注意ください。

D坂の殺人事件

D坂の殺人事件の画像です。

わたくし、すどうみやこは断言します!

21世紀は三輪姉妹の世紀であると!


三輪家の長女・ひとみちゃんとのファースト・コンタクトは、1998年の初夏のことでした。原作は、明智小五郎の初登場作として名高い江戸川乱歩の傑作。監督は鬼才・実相寺昭雄。D坂(団子坂?)というところにある古本屋の女将が殺され、それを明智が解決するという原作に、乱歩の他の短編(『陰獣』や『心理試験』)を織り交ぜての映像化です。同じ実相寺監督の『屋根裏の散歩者』に引き続き、嶋田久作が明智を演じていますが、物語の中心となるのは真田広之扮する贋作絵師。

乱歩作品といえば、様々な性癖を持った奇人変人がゾロゾロ出てきますが、その代表格は服装倒錯癖を持つ男……つまり女装者です(^^;) これは絵的にも表現しやすいためか、乱歩映画にもしばしば女装者が登場します。日本のカルト映画といって真っ先に名前が挙がる石井輝男の『恐怖奇形人間』では由利徹がグロい女装してるし、実相寺監督の前作『屋根裏の散歩者』でも三上博史がウイッグかぶって口紅を引くシーンがあったりしました。乱歩自身が主人公の『RAMPO』では平幹二郎(役名が変態伯爵!)の女装姿が楽しめます。また、丸山(三輪)明宏が女怪盗を演じた深作欣二の『黒蜥蜴』ってのもありました。

『D坂の殺人事件』もまたその例に漏れずきっちり乱歩世界を踏襲してます。主人公の絵師は、女装したときの己がこの世でもっとも美しいと思ってるナルナルな人(笑) 映画の後半では、真田の女装姿(しかもソフトSM入り)をたっぷり堪能することができます。自分の身体に縄をかけ、ばっちりメイクしたお顔を鏡に映してウットリ見とれるシーンは、全女装子必見の名場面といえるでしょう(ホントか?)。当時わたしはまだ本格的にここ世界に足を踏み入れてたってわけじゃありませんでしたが、真田の気持ちはよくわかりました。そして、こうも思いました。

こいつ…演技と違て素でやっとるな(爆)

それほど真に迫ったインパクト大の真田の女装シーンなんですが、それ以上の爆弾を実相寺監督は最後の最後に用意してました。それが……三輪ひとみなのでした。

ひとみちゃんの出番は、中盤と終盤に少しずつ。セリフもほんの一言だけで、出ても出なくてもストーリー上なんの問題もないって役どころです。が、ストーリー上は意味がなくても、映画のテーマ的には非常に重要な役だったりするんですな、これが。彼女の役名は「小林芳雄」。そう、あの小林少年なのです!

前に別のところで書いたんですが、わたしは自分の女装癖の原点はこの小林少年にあるのではないか、と考えています。子供の頃にむさぼり読んだ乱歩の少年探偵シリーズ(ポプラ社の)に登場する小林少年は、しょっちゅう女装しては二十面相のアジトに忍び込み、とっつかまってはヒドイ目にあうってことを繰り返してました。女の子のカッコのまま悪党どもにいたぶられるその姿に、わたしのリビドーは大いに刺激されたのです。いま思うと、小林少年が女の子のカッコで活躍する(いじめられる)シーンを楽しみたいがために、わたしは少年探偵シリーズをむさぼり読んでたのかもしれません(^^;)

明智小五郎の探偵譚は何度も映像化され、小林少年も何人もの役者さんによって演じられました。しかし、その中にわたしが思い浮かべる小林少年像にピッタシカンカンな人はいませんでした(小林少年が登場するすべての映像作品を観たわけじゃないんですけどね)。なんでお前が小林クンやねん、とゆーよーな人がほとんどでした。そもそも、彼らは劇中で女装しないんですよ。女装もせんのに小林少年を名乗るとは、ハッキリ言って詐欺みたいなもんです(笑)

そして、『D坂の殺人事件』。短くそろえた髪に詰め襟姿の三輪ひとみ嬢を銀幕上に確認したとき、わたしはついに見つけた、と叫びました(もちろん心の中でですが ^^;)。そう、そこにはわたしの理想の小林少年がいたのです。そして、わたしはこうも思いました。

この子ならきっと女装しても似合いよるで(爆)

そして、そして、この映画のラストシーン、ホンマに小林少年は女装するのです!

事件解決後の犯人宅で、犯人である真田の気持ちが理解できないと首をひねる明智に向かい、小林少年は「うまくは言えないけど、わかるような気がする」と応えます(これがこの映画における小林少年のたったひとつのセリフです)。そして、明智が席を離れた隙に彼は真田が着ていた女物の着物を羽織り、唇に紅をさします。鏡に映るおのれの姿にウットリする彼(=彼女)の姿がこの映画の実質的なラストカットなのでした(実質的と書いたのは、そのあと犯行現場の表戸がチラッと写しだされるからです)。

それにしても、さすがは実相寺昭雄です。その独特の感性と手法で、奇跡のような映像美を次々と紡ぎだしてきた実相寺監督。彼はまた稀代のスケベ親父ときてます。乱歩を理解し、スケベを知りつくした親父だからこそ、世にも美しき小林少年を生みだすことができたのでしょう。余談ですが、のちに実相寺監督は「ひとみはワシの若い頃によく似てる」という恐ろしい発言をしています(笑)

『D坂の殺人事件』公開後、実相寺監督は「乱歩をもう1本撮りたい」と語り、具体的に『青銅の魔人』のタイトルさえ出していました。おお、『青銅の魔人』といえば、怪人二十面相と少年探偵団が真っ向から対決するお話ではありませんか!

『D坂の殺人事件』の原作に小林少年は登場しませんし、この映画版でも先に書いたように、別に出さなくってもいい役だったわけです。それを力ずくで出しちゃったってことは、次回作で小林少年=ひとみちゃんを大活躍させる布石だったんでは、と考えたくなるのが人情ってもんでしょう。となるとトーゼン、小林少年の女装シーンもあるハズ。原作に女装シーンがあったかどーか忘れましたが、仮になかったとしても実相寺監督ならムリヤリにでもそんなシーンを付け加えるハズです(笑)

女の子のひとみちゃんが男の子の役をして、そのうえ女装する。そして、二十面相にいたぶられる。手鎖なんかで天井から吊るされて、苦痛にゆがむ小林少年の顔! ああ、なんて甘美な! なんて倒錯的な! わたしの頭は妄想でバクハツ寸前でした(笑)

ところが、あれからもう4年も5年も経つのに、その後、実相寺監督が乱歩を撮ったとか撮るとかって話はいっこうに聞こえてきません。ポシャっちゃったのかなァ。ひとみちゃんが小林少年を演じられるのは、おそらくここ1〜2年が限度でしょうから、なんとかその間に、この夢の企画が実現してくれることを願います。それか、いっそ、もう何年か待って、明智小五郎を演じてもらうとか(笑) もちろん女装シーンありでね(爆)

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発狂する唇

発狂する唇の画像です。

『D坂の殺人事件』以来、実相寺昭雄は新作映画を撮ってませんが、三輪家の長女は走りに走りまくってます。いまや、菅野美穂、佐伯日菜子といった強力なライバルを蹴落として、ジャパニーズ・ホラー・クイーンの座に就いたと言っても過言ではありますまい。そんなひとみ姉さんの行くべき道を決定づけた映画が『発狂する唇』でした。

ここ数年来のホラー映画ブームの立役者・高橋洋の脚本を佐々木浩久が監督したこの映画、とにかくスゴイ作品です。なにがスゴイといっても、なんやわけわからんところがスゴイ(笑)わけわからんままに最後まで魅入ってしまうところがまたスゴイ。

死刑囚の家族にふりかかる厄災ちゅーか、とにかくこの家族がワヤクチャな目に遭うって話です。ひとみ姉さんはその一家の次女役で、もっともワヤクチャにされる役。それも、そんじょそこらのワヤクチャさやない。うさんくさい霊能者やら悪徳刑事やら謎の組織やらにいーようにされる。んなことをされるのかっちゅーと…それを言ってしまうと面白さが半減するので教えたげない(笑) 気になる人はビデオかDVDで観てください。

この作品までのひとみ姉さんのスタンスは”アイドル女優”だったハズです。でも、この作品では完全に”アイドル”を捨ててます。それどころか”人間性”をも捨ててます(笑) お花咲き乱れた公園で、とつぜん歌いだすというアイドル映画ぽいシーンもあるにはあるんですが、それ以外はもう完全にイっちゃってるシーンばかりです。何がひとみ姉さんにここまでやらせたんでしょう? 事務所はなぜ止めなかったんでしょう?

しかし……結果的にこれは大正解だったわけです。先にも書いたように、ひとみ姉さんはホラー・クイーンの座に上り詰め、日本映画界は”三輪姉妹”という大きな資源を手に入れることになるのです。

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